
シャドーイングとは、聞こえてくる英文のすぐ後ろを影(shadow)のように追いかけながら復唱していく英語学習・勉強の方法です。
英文を聞き終えてから繰り返す「リピート」とは異なり、英文の最初の単語を聞いてから0.2秒以内に追随して発話していきます。シャドーイングでは、ネイティブスピーカーを真似ることで英語のナチュラルな発音や話し方、間、呼吸などを習得可能です。
シャドーイングを通じて、ジャパングリッシュから卒業し、より聞きやすい、通じやすい英語を習得していきましょう。今回はシャドーイングの具体的な方法論と活用できるサービスを紹介します。
目次
- シャドーイングの種類
- リピーティングとの違い
- シャドーイングに必要となる英語レベル
- シャドーイングで鍛えられる英語の能力
- シャドーイングを効率的に行う方法
- シャドーイングの効率が下がってしまう気をつけるポイント
- シャドーイングができるおすすめサービス・アプリ紹介
シャドーイングの種類
シャドーイングには細かくいろいろな方法があります。同時通訳者のための訓練方法とされているシャドーイングは数秒遅れの復唱ですが、それとは異なり第二言語習得のためのシャドーイングでは、冒頭に述べたとおり0.2秒程度で復唱すしていきます。
シャドーイングには意味解釈をしながらシャドーイングするコンテンツ・シャドーイング(contents shadowing)と、コンテンツの意味などはあまり気にせず、音だけをなぞっていくプロソディ・シャドーイング(prosodic shadowing)の2つがあります。
明確にどちらをやるか意識しながら取り組むことも可能ですが、今回は2つの良さを取り混ぜながら行うシャドーイングの方法を紹介します。
リピーティングとの違い

シャドーイングはよくリピーティングと混同されますが、全く違うものです。図の通りシャドーイングは音を聞きながら復唱するのに対し、リピーティングは聞き終わってから復唱を開始します。それぞれ一長一短あるのでどんな英語の能力を伸ばしたいかに応じてトライする内容をかえていくと良いですね!
シャドーイングに必要となる英語レベル
シャドーイング対象とする教材のレベルに応じて初心者からでもできるのがシャドーイングのいいところです。
Hi!
だけでもシャドーイングする意味はあります。ぜひ簡単なところからはじめてシャドーイングの良さを実感してください。
シャドーイングで鍛えられる英語の能力
シャドーイングは、リスニングやスピーキングの強化などに大変役立ちます。ネイティブスピーカーならではの「発音」、「英語のリズム」、「音の強弱」、「イントネーション」など学べるものは多く、シャドーイングの教材を調整することで「リスニング力」、「スピーキング力」、「語彙力」の強化にも繋がります。
シャドーイングを効率的に行う方法
では、シャドーイングを通じて効率的に英語を習得する方法を説明します。
シャドーイングにもいろいろな難易度がありますが、一番むずかしいのは、複数のセンテンスからなる文章を字幕なし、音声のみの音源をシャドーイングすることです。
いきなり難しいことをすると挫けてしまうので、徐々にステップを踏んで行きましょう。
下準備①場所の確保が大事
シャドーイングでは、しっかり声を出して練習することが非常に大切です。シャドーイング対象になりきりことが必須条件です。
小声でぼそぼそ話しては意味がありません。
そのため、シャドーイング時には「照れ」が最大の障壁となります。まずは「照れ」が一ミリも存在しない空間を作りましょう。
下準備②音源機材と録音機材をそれぞれ準備する。
シャドーイングするためのコンテンツを再生する機材と、シャドーイングしている自分の音声を録音する機材を準備しましょう。
機材と言っても大したものを準備する必要はありません。
- コンテンツ再生用にパソコン・ラップトップ(イヤホンが使えるもの推奨)
- 自分の音声の録音用にスマホ
があれば事足ります。
スマホ一台しか準備出来ない方は、自分の音声の録音はすっぱり諦めてしまっていいと思います。
下準備③シャドーイング向けのコンテンツ選び
まず、大きな前提としてシャドーイングには字幕のオンオフ機能のある動画が必須です。最後にこれらの動画を探せるサービスを紹介しているのでその中から探してみてください。
また、シャドーイングでは自分の好きな話題に関するもの、自分の憧れ・好きな有名人や著名人のスピーチなどがおすすめです。正直言って何回も聞くことになるので根気よく聞いてもストレスにならないものがおすすめです。
逆に、よくわからない政治家のスピーチなどはおすすめしません。眠くなりますし、そもそも何を言っているか理解できない可能性もあります。
最後に、可能であれば自分の語彙力で理解できる内容がおすすめです。
シャドーイングでは、発音やイントネーション、独特の間やボディーランゲージを習得していくことになるのですが、それに加えて新しい単語や文法などの勉強も加わると明らかに too much になってしまいます。
シャドーイングでは、なるべく平易な英語を使っているものから始めることをおすすめします。
【シャドーイング0回目】音源の内容把握のためのリスニング+字幕付き
好きなコンテンツを決めたら早速動画を再生して聞いてみましょう。まずは、英語字幕付きで聞いていきます。
シャドーイングの下地作りになるため、まだシャドーイングはしません。
まずはじっくり聞いて、字幕も見ながら何を言っているか把握に努めます。
【シャドーイング1回目】シャドーイング(短)+字幕+録音
一度通しで聞いたら今度はシャドーイングをしていきます。
難易度を下げるために、センテンス区切りぐらいで動画を止めながらシャドーイングしていきます。またこのときは、まだ英語字幕付きで行います。
英文が間違ったままシャドーイングしてもいいことはありません。正確にスクリプトを把握した上で、ネイティブの発音・アクセントに近づけていきましょう。
また、録音ができる人は一回の停止毎に録音を聞いて自分の発音・イントネーションを確認しましょう。ボディランゲージまで練習したい場合には、動画を撮ってもいいです。
この「自分を録音・録画して見直す」は日本語のプレゼンテーションでも非常に効果的です。なにせ、ほとんどの人はプレゼンをする回数よりもみる回数の方が多いため、自分の改善ポイントが自分でよく分かります。
ちなみに、ダンサーが鏡のある部屋で練習しているのはそのためですし、サッカーの練習などでも動画で自分を撮影して分析する手法があります。
【シャドーイング2回目】シャドーイング(短)+録音)
二回目のシャドーイングでは、英語の字幕を取り除いた状態で先程と同じ長さに区切りながらシャドーイングしていきます。今までは文字を読みながらでしたが、二回目ではテキストの補助なしにシャドーイングしていきます。
一回目と比較して圧倒的にリスニングに対する集中力が求められることがわかるかと思います。
もちろんこちらも録音して修正点を見つけ、修正していきます。
【シャドーイング3回目】シャドーイング(長)+字幕(+録音)
短い文量で区切りながらのシャドーイングを終えたらつぎは、再度字幕を戻して一回でシャドーイングする長さを長くして取り組みます。
長さとしては、2−3センテンスがいいと思います。
このシャドーイングでも前回同様に、一回の停止毎に録音を聞いて自分の発音・イントネーションを確認し修正可能なポイントがあれば修正していきます。
前のステップでかなりやりこんでいるとこのステップが非常に簡単になってしまう場合があります。その場合は、そのまま4回目にトライしてもいいと思います。
【シャドーイング4回目】シャドーイング(長)+録音
次は、長めのセンテンス郡で字幕の補助無くシャドーイングしてみましょう。
ここまでくれば、シャドーイング対象のコンテンツをおおよそ覚えてしまっているかと思います。ここからはよりイントネーションやボディーランゲージ、間など細かい部分に注意を払ってきましょう。なりきり力が試されます。
【シャドーイング5回目】シャドーイング(全文)+録音
最後のシャドーイングです。ここでは、一度も動画を停止させることなくシャドーイングしていきます。ここまで達成できれば、動画の内容は自分のモノにしていると言っていいと思います。
シャドーイングの効率が下がってしまう気をつけるポイント
間違った方法でシャドーイングをしても、効率が上がりません。効率が下がってしまう避けるべきシャドーイングのポイントを紹介します。
コンテンツのレベルは丁寧に選ぶこと
まず、自分のレベルに合ったシャドーイングのコンテンツを選んべていない場合に非効率なシャドーイングになってしまいます。
たとえば、以下のように感じたときはコンテンツを選び直す必要があります。
- 音声のスピードが早すぎて何を言っているのか全くわからない。
- 音声のスピードが早すぎて、何回やっても口が回らない
- わからない単語だらけ
- リンキング、リエゾンなど単語ごとの音がつながって発音される単語に全く対応できない。
- ただただ、長い。
- ただただ、つまらない。
音声から0.2秒以内に発話を心がける。
シャドーイングの効果を下げてしまうやり方として、音声から時間をかけて発話する方法があります。時間をかければかけるほど、文章の意味を考えてしまいます。シャドーイングでは、スピーキングという動作と音に集中し言葉の運びやイントネーション・発音をトレーニングしましょう。
シャドーイングができるおすすめサービス・アプリ紹介
最低限必要な機能は、動画に英語の字幕を付けて見れるかどうか。
加えてあるとより良い機能としては、再生速度の調整機能です。シャドーイングでは、教材のスピードが最もハードルになりやすいです。そのためこのスピードの調整が非常に大切になります。
シャドーイングで使えるサービス
Youtube
youtubeはシャドーイングに最適です。コンテンツ自体も豊富ですし、英語の字幕も付けられます。そして何より再生スピードの調整ができるのがいいですね!
TED
TED(Technology Entertainment Design)とは、世界中の著名人によるさまざまな講演会を開催・配信している非営利団体です。
その配信には英語の字幕がつけられているものがあるので、それを利用してシャドーイングをすることが出来ます。ネイティブの英語に加え、ノンネイティブだけど大学の教授や研究者など知識層の英語を聞くことができます。こちらも字幕付き。
話の内容が多岐にわたりいろいろな視点があり聞いて楽しいのでおすすめです。英語の学習にとってTEDはかなりおすすめなサービスになっています。
Netflex
いわずとしれた動画配信サービスのネットフリックスもおすすめです。好きなドラマを見ながらのシャドーイングはかなり楽しいです。
注意してほしいのが、映画やドラマのジャンルによって使われる英語の内容がかなり偏るということです。
恋愛系であれば、詩的に。Si-Fiやアドベンチャー系ならそれなりの英語になっていきます。このあたりは念頭においてシャドーイングすることをおすすめします。
最後に
シャドーイングは、リスニングとスピーキングを同時にこなすなかなかハードな英語のトレーニングと言えます。そのかわり一つのコンテンツについて何回も見直し、自分の英語に対してフィードバックをしていくことにより、格段に英語のの力が上がることは間違いありません。
とはいっても、目的はシャドーイングすることではなく、あくまで英語を使えるようになることを目標にシャドーイングすることが重要です。目的意識を持ってシャドーイングしましょう。


